ステージが回転し、Soundscapeがニューヨークのサウンドを生々しく再現。
ヘレンヘイズ劇場にて、『ロビー・ヒーロー』を華麗に復活させた「セカンド・ステージ・シアター(Second Stage Theatre)」。リアリスティックなダイアローグで定評のある脚本家、ケネス・ロナーガン。アカデミー賞受賞歴もある彼のこのドラマは、アパートのロビー内で繰り広げられていきます。
そしてその上演に使われたからくりも、観衆をドラマに引き込んでいくパワフルなものとなっています。デイビット・ロックウェルがクリエイトした回転式の舞台セット。観客を親密で、ショッキングなダイアローグに引き込みながら、回転して消え去っていく構成です。サウンドデザイナーのダロン・L・ウェストは、観客が全てのニュアンスをたっぷりと堪能できるように、同様に親密で、画期的な新しいd&bの技術、d&b Soundscapeを採用しました。彼はどうしてこの技術をブロードウェイで初めてトライしてみようと決心したのでしょう?
「この劇場での仕事は初めてではないんですよ。随分歴史のある劇場なんですが、セカンド・ステージ・シアター(Second Stage Theatre)が最近買収し、リニューアルしました。音響はすごく親密なんです。でも問題は回転ステージ。このセットにはサウンドを反響させる壁がないので、俳優達の声を全てマイクでピックアップしなければなりません。ステージはすごく大きくて、場内自体はこじんまり。芝居を見せるのにはすごく嬉しい親密にな雰囲気です。室内の音響は心地良く、ワイドで、臨場感のあるものです。この劇場内には一部、ユニークな音響があるスペースがあります。ブース劇場にちょっと似てるんですが、またちょっと一味違うんですよ。サウンドにすごく幅がある。耳に入ってくるものの周りに沢山の空間があるんです。」
ウェストの右腕、チャールズ・コーズはここに回転ステージの難問の答えを見出しました。「回転舞台の上で上演される芝居というコンセプトは最初から決まっていたんです。早い段階で既に、場面を見る観客の視点を常に変えていけるように、回転舞台をゆっくり回転させることを話し合っていました。ダロンと僕は普通ならすごく慎重にディレイを入れるマルチゾーンシステムを作るのですが、、回転ステージになるとちょっと難しくなるんですよ。だから僕は音響補正に焦点を置いて取り組みました。Soundscapeについて話し合った結果、ダロンはこれを使えば手作業で設定レベルを調節するのではなく、オブジェクトオーディオの技術でサウンドエフェクトを深めていくことができることを発見したんです。」
オプションで提供されている二つのソフトウェアモジュール、そしてシグナルエンジンDS100を組み合わせてd&b Soundscapeを使いました。これまでには考えられなかったようなサウンド体験を生み出してくれる素晴らしいツールキットです。ウェストはEn-Sceneソフトウェアを使い、64ものサウンドオブジェクトを個別に配置、移動させ、ロビー・ヒーローの上演のために味わいのあるニューヨークの街のサウンドを再現しました。d&bラウドスピーカーの配置は、通常の舞台正面の上下左右、中央クラスター、ダウンフィル、バルコニーの上下のディレイ、そしてオーケストラとバルコニーのレベルを通してのサラウンド、そしてサブウーファー。サウンドデザイナーが伝統的な劇場空間で行うレイアウトとさほど異なるものではありません。Soundscapeがスピーカーにサウンドを伝達することにより生まれる効果こそが大きな違いを生み出しました。
「音楽だけを取り扱っているのではなくて、セットを回転させながら、シーンにぴったりのニューヨークのノイズ、交通、人の声をサウンドとして再生しているんです。リアリスティックなドラマにするために、毎日の普通の生活のように、シーンも様々のサウンドに包まれたものでなければなりません。私はこんな様々なサウンドをニューヨークの音楽としてみなし、観衆にまさにこれを体験して欲しいと考えたんです」、とウェストは説明します。
「d&bがあったので本当に助かりました」、と続けるコーズ。「新しい製品とはいえ、すごく安心して使えました。Soundscapeはすごく親しみのある技術をベースに作られたユニークなアルゴリズムで、R1はDanteやOSC同様よく使うものですから、カッコいいボックスが真ん中に置かれたところで、システムやワークフローにそれを統合していくのはすごく簡単でした。」
ウェスト。「Soundscapeにはあまり目立って欲しくなかったんです。この芝居に無理やり押し付けることなく、プロダクションにスムースに統合できるもの、縁の下の力持ちになって欲しかった。まさにその通りになりました。ロビー・ヒーローは微妙さがものを言うお芝居ですからね。」
コーズもそれには同感のようです。「ロビー・ヒーローはサウンドやサウンドデザインが主役の芝居ではありません。舞台監督のトリップ・カルマンは、観客がキャスト全員の素晴らしい演技に惹き込まれていけるようにこの芝居を作り上げました。世界は観客を中心にその周りでくるくると変化し、観衆はそこにどんどん引き込まれていきます。Soundscapeは音響を補正しながら、芝居の内容にぴったりのサウンドを提供し、その一方、劇場内にある音響が難しいゾーンにもきれいにそれを響かせることができる非常に使いやすいツールです。ダロンは私たちをストーリーに集中させてくれます。私の仕事は、そのための技術を管理し、サウンドを自然にストーリーに溶け込ませることです。Soundscapeが本当に役に立ちました。」