スターバト・マーテルのニューサウンド。
Mike Clark著。初回発表は2018年9月のLSiの記事。
作曲家Gioachino Rossiniの死去150周年を記念して今年世界中で開催された無数のイベントのうち、技術的な観点から見て最も類稀なものの1つは、偉大な巨匠のゆかりの地であるボローニャで開催されたものでした。アルキジンナジオ館ではMichele Mariottiの指揮のもと非常に象徴的なコンサートが行われ、そこでは、Rossiniの「スターバト・マーテル」の演奏がフィーチャーされました。会場となったホールは、これに似つかわしい名がついたターバト・マーテルの間でした。以前はボローニャ大学の本館であったアルキジンナジオ館は1842年3月に、Gaetano Donizettiの指揮のもと、同作品のイタリアでの初披露の舞台となりました。
観客からの熱い要望にもかかわらず、このペーザロ生まれの作曲家は最初の2晩は神経過敏のために出席しなかったので、その後DonizettiはRossiniをアルキジンナジオ館での3回目のコンサートに出席させなければならないと訴えました。現代に戻りましょう。その小さな部屋では、20人編成のオーケストラ、コーラス隊、4人のソリストが演奏して、同時に聴衆を収容することができなかったので、コンサートは、d&b audiotechnikのSoundscapeシステムのオーディオ再生を用いて、ボローニャのTeatro Comunaleのシネマスクリーンで生中継されました。これは170年以上前のRossiniの作品のように、この会場でのイタリア公式デビューとなりました。
イタリアのBH Audioは2013年以来、あるプラットフォームの重要なベータテストの実施を委任されたd&bのメインパートナーの1つでした。このプラットフォームは結局Soundscapeとなりました。今年2月にアムステルダムのISEで正式にローンチされたSoundscapeでは、d&bラウドスピーカーシステムと最新の処理能力、オブジェクトベースのミキシング、洗練されたルームエミュレーションが巧みに組み合わされており、自然で調和のとれた、聴衆を包み込むようなリスニング体験をオーディエンスに届けることが可能です。B&Hのシステムで実施されたベータテストは、Pala de André屋内アリーナで行われたRavenna Festivalの多数のイベントで行われました。そこに登場したアーティストには、Yo-Yo Ma、Enrico Rava、Ute Lemperなどのアーティスト、またはサンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー、ミュンヘン・フィルハーモニー、ブダペスト・フェスティバル・オーケストラ、ハンブルグ・フィルハーモニー、フィレンツェのマッジオ・ムジカーレといった名高いオーケストラが挙げられます。フェスティバルの伝統である、Alighieri劇場で行われたAutumn Opera Trilogyでもテストが実行されました。これは、控えめに言っても、厳しいテストグランドでした。 BH Audio MDのMassimo Carli氏はテストプロセスについて以下のように説明します。「まずは、1つのサウンドスケープ“machine”しかありませんでした。私たちはこれを、いくつかのイベントに利用していました(クラフトワークの3Dコンサートで同じものが使用された。2017年10月のLSiを参照)。初年のテストの後、d&bは私たちにmachineを提供し、私たちはこれを2年前まで保有していましたが、これはソフトウェアにするために定期的にアップグレードされました。それから他のものも提供されました。現在のDS100プロセッサーに似ていますが、まだプロトタイプでした。 d&bは技術サポートを提供してくれました。特に最初の1年間は開発者の1人、Felix Einsiedelがセットアップ中に緊密に私と協力してくれました。
BHチームがスターバト・マーテルの間で配置した機材は以下の通りです:Lawo Compact I / Oステージボックス(32マイク・イン + 16チャンネルAES EBUイン)1台、Studer D19(それぞれ8チャンネルのAD / AES-EBUコンバーター付きマイクプリアンプを搭載)2台 、マルチバーター(イベントレコーディング用のMadi - Ravenna AES67)1台、Cisco Series 300管理のスイッチ1台、マルチトラック録画用のRavenna Mergingドライバを搭載したMacBook Pro2台、ステージボックスとLepida光ファイバ接続キャビネットを接続するLC / LCマルチモード・ファイバケーブル4本(そこから1キロ離れた劇場のキャビネットとの接続)。Lepidaはボローニャを拠点とした会社で、ファイバーケーブル・ネットワークインフラを使用して通信インフラおよびテレマティクス・サービスをプラニング、設計、開発、実現、構成、実行しています。
マイクロフォンに関して言うと、20人のオーケストラメンバーにはDPA 4023小型カーディオイド・マイクロフォン とSchoeps CCM4、CCM5、MK4を使用し、コーラスにはノイマンKM140を8台、4人のソロ歌手にはSchoeps MK21を使用しました。一方、アンビエントマイクとしてDPA 4090を2本使用しました。劇場のBibbienaホールに設置されたFOHのセットアップは、Lawomc²36コンソール、En-SceneとEn-Spaceソフトウェアを搭載した2つのd&b audiotechnik DS100 Soundscapeユニット、3つのDS10(Dante / AES67~AES-EBU) コンバーターおよび3つのCiscoシリーズ300管理のスイッチから構成されます。大スクリーン後方のd&b audiotechnikメインシステムは、アレイ処理を備えた8台のT10と、サブアレイ設定された8台の床設置Y-SUBを搭載する4つのクラスターから構成されていました。さらに8台のT10がフロントフィル・コーラスのフロアに置かれました。En-Space環境は、観客の周囲に設置された16台の8Sによって再現され、2番目のボックスに設置されました。そしてシステムに電力を供給するために、BH Audioは、10D(フロントフィルおよびEn-Spaceスピーカー)の24チャンネルとD80の32チャンネル(メインスクリーン機材用)をフィールドしました。Soundscapeの心臓部には、Audinate Danteネットワーキングを備えた高性能オーディオプロセッサーであるDS100 Signal Engineと、広範な入出力処理を備えた強力な64 x 64レベルおよびディレイ・マトリクスがあります。サウンドデザイナーたちは、2つのオプション・ソフトウェア・モジュール(最大64の“サウンドオブジェクト”を個別に配置し、置き換えることができるEn-Scene、ならびにEn-Spaceルームエミュレーション・ツール)を介して、すべてのSoundscapeの機能にアクセスできます。
「オーディエンスは音源の位置(ステージの上下左右)を“実際に”認識するので、システムが動作しているところを実際に聞いたことがない人にとっては、ステージ上の本物のオーケストラを聴いているかのように感じられます」とCarliは説明します。「BHや他のパートナーとの5年間にわたる開発と現場での綿密なテストの結果、在Backnangのd&b研究開発チームが自問した問題への答えは結局、Soundscapeからもたらされました。「ステレオオーディオによる選択的なリスニングではなく、どのようにして観客全員に同じように自然で本物のリスニング体験を提供できるだろう?」「要するに、“リスナーのための民主主義”というd&bの信念が再表明されているだけでなく、最近とりわけショービジネスで過度に使用されている“没入型”という形容詞の完璧な実演となっているのです。
ボローニャでのイベントの後、Carliは夢中になりました。「事前にスターバト・マーテルの間と劇場の間のセットアップをしっかりとシミュレートし、データの“ドロップ”をランダムにチェックして、必要なテスト、特に光ファイバー接続のテストを開始しました。現地でセットアップした時には、すべてが完璧に機能しました」